もうひとつのお正月立冬。小雪。口切り。凛とした冬の冷たい空気を感じ、温泉街には湯気が立ちのぼります。 茶道で11月は炉が始まる開炉の季節。 そして、5月上旬(八十八夜の頃)から6月に摘みとられたばかりの新茶を詰めた茶壺の口を開ける「口切り」が行われる季節。 炉を開けて新茶をいただく・・・ まさに11月は茶人にとってのお正月。 すがすがしい始まりの季節でございます。 昔は鉄筋もコンクリートもなく、木と紙と土で家を建てていたので、火事がなによりも怖く恐れられていました。 亥は、陰の気の極まる「極陰」と言われ、陰陽五行説では水性に当たり、火災を逃れるという信仰があります。「火伏せ」とも言われます。 このため江戸時代の庶民の間では、亥の月(旧暦10月=新暦11月)の亥の日に、囲炉裏や炬燵を開いて、火鉢を出し始めた風習がありました。 お茶の世界でも、この日を炉開きの日としており、「亥の子餅(餅に小豆やゴマを入れ込んだ餅)」やおぜんざい(関東ではお汁粉)などを、亥の月の亥の日の亥の刻(午後10時頃)に穀物を練りこんだ餅を食べて 無病息災を祈願したと言われています。 今月の天童荘懐石は、そんな茶道の古き良き日本文化をテーマに、金箔などのお目出たい器、伊勢海老などのおめでたい素材を使い、さらにはこの時期の紅葉を彩る銀杏並木、茶道裏千家の紋章でもある銀杏も使いました。 華やかな新年とはひと味違う、侘び寂びの趣き溢れる茶人のもうひとつの正月を、天童荘懐石で是非お楽しみくださいませ。 |